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東京家庭裁判所 昭和54年(家)1935号 審判

申立人 井上秀治 外三名

右法定代理人親権者母 井上ミヤ子

相手方 井上良秀

主文

相手方は申立人ら各自に対し、扶養料として、

一  各金一〇五、〇〇〇円を本審判確定時に、

二  昭和五四年一一月六日から申立人らがそれぞれ成年に達する日まで一か月各金五、〇〇〇円を各当月末日限り

それぞれ支払え。

理由

一  本件申立ての要旨

申立人ら法定代理人は、「相手方は申立人ら各自に対し、扶養料として、一か月各金二〇、〇〇〇円ずつを送金して支払うべし。」との審判を求め、その申立ての実情として、「相手方は申立人らの父であるところ、申立人法定代理人と相手方との間の当庁昭和五一年(家イ)第三三七号夫婦関係調整調停事件において昭和五一年四月二日相手方は申立人法定代理人に対し、申立人らの養育料として、一人につき一か月金一〇、〇〇〇円ずつ支払うべき旨の審判がなされ、同審判は同年五月一五日確定した。しかし、その後物価等の上昇、申立人らに要する諸経費の増加及び相手方の生活の安定などを考慮し、申立人らは相手方に対し、申立人らの扶養料として、一人につき一か月金二〇、〇〇〇円ずつの支払いを求める。」と述べた。

二  当裁判所の判断

甲第一ないし第四号証、乙第一ないし第七号証(いずれも真正に成立したものと認められる)、東京家庭裁判所調査官○○○○作成の調査報告書(添付書類を含む)、東京家庭裁判所調査官○○○○作成の調査報告書、旭川家庭裁判所調査官○○○作成の扶養事件調査報告書及び相手方に対する各審問の結果を合わせ考えると、次のとおり認めることができる。

申立人らの母であり、親権者である申立人ら法定代理人と相手方とは、昭和四二年五月一八日婚姻し、申立人井上秀治(昭和四二年五月二六日生)、申立人井上良也(昭和四四年二月一七日生)、申立人井上信次(昭和四六年四月四日生)及び申立人井上紀夫(昭和四七年七月二七日生)は申立人ら法定代理人と相手方との長男、二男、三男及び四男として出生した。その後、申立人ら法定代理人からの相手方に対する東京家庭裁判所昭和五一年(家イ)第三三七号夫婦関係調整調停事件において、「申立人ら法定代理人と相手方とを離婚する。長男、二男、三男及び四男の親権者をいずれも母である申立人ら法定代理人と定める。相手方は申立人ら法定代理人に対し、長男、二男、三男及び四男の養育料として、昭和五一年四月一日から各児が成人に達するまで一人につき一か月金一〇、〇〇〇円ずつを毎月二五日限り送金して支払え。」という趣旨の調停に代わる審判がなされた。そして、同審判は昭和五一年五月一五日確定した(この点は当裁判所に顕著な事実である)。

申立人ら法定代理人及び申立人らは、上記審判時肩書地住所の道営住宅に同居し、申立人ら法定代理人は生活保護を受け、申立人らを養育していた。上記審判後、申立人ら法定代理人は、相手方から一か月金四〇、〇〇〇円の養育費の送金を受けることとなり、その分を差し引かれて生活保護費の支給を受けている。これらの点は、その後もほぼ事情の変化はないが、長男は小学校六年生、二男は同五年生、三男は同三年生及び四男は同一年生に在学中となつている。

他方、相手方は、昭和五〇年一〇月から○○○○株式会社に勤務し、○○○○の仕事に従事し、上記審判当時残業手当てを含め給与月額(税等込み)約一八〇、〇〇〇円であり、税金、保険及び家賃合計金一八、六〇〇円を控除した給与月額は約一五〇、〇〇〇円であり、年二回の賞与額は合計約金三〇〇、〇〇〇円前後であつた。その後、相手方の収入は、次第に増加したが、相手方は昭和五四年二月から膝に水がたまり、残業も意のままにならず、収入もやや減少している。そして相手方の昭和五四年一月から六月までの給与は総額一、三四四、八六〇円であり、税金及び社会保険料を控除した給与額は金一、一八八、八四〇円であつて、一か月平均額は約金一九八、〇〇〇円である。このほか、相手方は年二回の賞与として約金四〇〇、〇〇〇円を得ている。

また、相手方は、昭和五二年五月四日再婚し、妻紀代子及び長女智恵子(昭和五二年一一月一一日生)を扶養している。相手方は妻及び長女と別居し、会社の施設で生活しているが、近く以前に居住していた住居を家賃一か月金二〇、〇〇〇円程度で借用し妻及び長女と同居する考えである。

以上のとおり認めることができ、他にこれをくつがえすに足る証拠はない。

これら諸般の事情を考慮すると、相手方は申立人ら各自に対し、申立人らの本件扶養請求の意思表示が相手方に到達したことの明らかな昭和五三年二月六日(第一回調停期日)以降申立人らがそれぞれ成年に達するまで一か月各金一五、〇〇〇円を各当月末日限り支払うのが相当である。

申立人ら法定代理人は、相手方に対し、申立人らの養育料として、申立人らがそれぞれ成年に達するまで一人につき一か月金一〇、〇〇〇円ずつの支払を命ずる執行力ある債務名義(昭和五一年五月一五日の確定審判)を得ているところ、同確定審判は、本件と申立人を異にするが、その給付を命ずる範囲において実質的に申立人らの扶養の目的の手段としての機能を果たしているのであるから、本件においては上記確定審判により形成された養育料の金額を超える部分について相手方の申立人らに対する扶養義務を形成するのが相当である。

してみると、相手方は、申立人ら各自に対し、扶養料として、昭和五三年二月六日から昭和五四年一一月五日まで一人につき一か月金五、〇〇〇円ずつ合計各金一〇五、〇〇〇円を本審判確定時に、昭和五四年一一月六日から申立人らがそれぞれ成年に達するまで一人につき各金五、〇〇〇円を各当月末日限りそれぞれ支払うべきである。

よつて、主文のとおり審判する。

(家事審判官 猪瀬慎一郎)

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